千葉県千葉市花見川区の税理士 徳山博章税理士事務所

太陽光発電設備に関する税務

平成24年7月より「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」に基づき固定価格買取制度が開始され、現在までに多くの個人や企 業により太陽光発電設備を設置されております。太陽光発電設備の設置により売電収入を得ることができることはご存知かと思いますが、その収入の申告等の税 務の扱いについてはあまり知られていないのではないでしょうか? 今回はその税務についてご紹介させて頂きたいと思います。

収入の区分

■個人の場合

売電の状況により扱いが異なり、下記の所得区分により確定申告が必要となります。(給与所得者で雑所得20万円以下の場合、申告が不要な場合もあります)

売電の状況 所得区分
自宅に設置した設備による余剰電力の売電、全量売電の収入 雑所得
事業を営んでいる個人が店舗や不動産に設置した設備による余剰電力の売電収入 事業所得・
不動産所得
事業を営んでいる個人が店舗や不動産に設置した設備による全量売電の収入 雑所得
売電自体を事業として発電を行っている場合※ 事業所得・
雑所得

※事業として発電を行っている場合とは一般的に出力量50kW以上の設備は事業所得となります。また、50kW未満の設備であっても発電の為に特段の管理を行っている場合は事業所得となる可能性があります。(具体的にはフェンス等が設置されている場合、除草・除雪を定期的に行う等の定期的な管理を行っている場合など)

■法人の場合

法人の場合の売電収入は余剰電力の売電、全量売電ともに売上または雑収入として計上し、他の事業の所得と合わせて課税標準を計算します。
※法人事業税は発電事業については他の所得金額課税事業と分け収入金額課税とするのが原則となりますが、一般的に売電による売上金額が他の主たる事業の 売上金額の1割程度以下であれば、附帯する事業とみなし主たる事業の所得に含めて法人事業税を計算して差し支えありません。

減価償却

■個人の場合

太陽光発電設備の取得に係る費用は、減価償却し必要経費に算入できます。
余剰売電の場合で発電した電力のうち事業用以外で自家消費した電力がある場合はそれを除いた割合のみを必要経費に算入することができます。
設備とその設置工事費用は有形固定資産の「機械及び装置」に該当し耐用年数は17年となります。 また、設置後の売電を開始する際の電力会社の系統連系工事にかかる工事負担金(連系工事負担金)は有形固定資産に含めることはできず、繰延資産とし15年で償却します。(20万円未満の場合は支出した年度に全額必要経費に算入)

(例)設備取得費用170万円、連系工事負担金30万円、自家消費割合20%の場合
・減価償却費 170万÷17年×(1-0.2)=80,000円
・繰延資産償却 30万円÷15年×(1-0.2)=16,000円

■法人の場合

1.主として売電を目的とし余剰電力を売電する場合や全量を売電する場合
有形固定資産として耐用年数17年で減価償却し全額を損金に算入できます。 連携工事負担金は前述の個人の場合と同様、20万円以上の場合は繰延資産として15年で償却します。20万円未満の場合は支出した事業年度に全額算入します。

2.発電した電力を主として工場等で自家消費し余剰電力を売電する場合
製造する最終製品に係る設備として判定を行います。例えば、最終製品が自動車の場合、耐用年数省令別表第2「23 輸送用機械器具製造業用設備」の9年が適用されます。

設備の取得に係る優遇税制

条件を満たした設備を取得した際に、税制により特別償却や税額控除等の優遇措置を受けられる場合があります。取得した時期により適用できる制度や金額が 異なりますので、取得した時期や対象設備となる要件の確認が必要となります。 ※特別償却の会計処理の詳細は2015年12月掲載の当トピックスをご参照ください。

■グリーン投資減税(環境関連投資促進税制)

エネルギー環境負荷を低減する対象設備を取得し1年以内に事業の用に供した場合優遇措置 を受けることができる制度です。太陽光発電は出力量10kW以上の設備が対象となります。

1.平成28年3月31日までに取得した場合(下記2つより選択)
・特別償却30%
・税額控除7%(法人税額の20%を上限・中小法人または個人事業者に限る)

2.平成28年4月1日以降平成30年3月31日までに取得した場合
太陽光発電設備についての適用要件の改正があり、固定価格買取制度の設備認定を行っていない出力量10kW以上の設備のみが対象となりました。
これにより、固定価格買取制度を適用した太陽光発電設備は対象外となりました。
※売電契約をせずに発電した電力を自家消費する場合や、電力会社と任意で売電契約を 結んだ場合は適用可能です。その場合の条件は上記1と同様となります。

■生産性向上設備投資促進税制

生産性の向上・改善のための設備投資を行った場合に優遇措置を受けられる制度です。 グリーン投資減税と異なり事前の申請が必要となりますのでご注意ください。
※適用要件等の詳細については、2015年5月掲載の当トピックスをご参照ください。

平成28年4月1日以降平成29年3月31日までに取得した場合(下記2つより選択)
・特別償却50%
・税額控除4%(法人税額の20%上限・中小法人または個人事業者に限る)

償却資産税

太陽光発電設備は原則として償却資産に該当する為申告が必要です。他の償却資産と同様に課税標準の1.4%が課税されます。
※家庭用で出力量10kW未満の設備は非課税となります。

■再生可能エネルギー発電設備に係る課税標準の特例措置

対象の設備を取得した場合3年度分の固定資産税を2/3に軽減される制度です。 適用期間が延長され平成30年3月31日までに取得した設備について適用されますが、上記のグリーン投資減税と同様の適用要件に変更され固定買取価格制度の認定発電設備は適用対象外となっております。

担当:田村 大介

-トピックス