民泊により生じる所得の課税関係等について
平成30年6月15日より、住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されました。これに伴い、国税庁からも民泊により生じる所得の課税関係等が公表されましたのでご紹介いたします。
民泊新法の概要
訪日外国人増加により宿泊施設の不足が問題となっていますが、これを解消するために、空き物件や別荘、自宅の一部の部屋などを貸し出して宿泊サービスを提供することを想定して新たに制定された法律になります。許可制ではないため、ホテル・旅館と比較すると比較的簡単に始めることができる反面、営業日数について年間180日を超えない範囲内にしなければならない制限もあります。
所得税の課税関係
(1)所得区分
民泊で得た所得は原則として「雑所得」に該当します。民泊は不動産の貸付け以外の役務の提供を含むことや、営業日数の制限もあることから基本的には「不動産所得」「事業所得」には該当しません。
ただし、不動産賃貸業を営む者が、空き部屋などを利用して一時的に民泊を行った場合や、専ら民泊による収入で生計を立てている場合等は「不動産所得」「事業所得」に該当するケースもあります。
(2)必要経費
民泊に関する支出は、所得計算上は経費に入れることができます。代表的な経費は次の通りです。
・住宅宿泊仲介業者に支払う仲介手数料
・水道光熱費
・宿泊者用の日用品等購入費
・民泊に利用している家屋の減価償却費
・固定資産税 など
大部分の経費が生活用部分と業務用部分で区別されていないため、民泊で利用する部分の床面積や利用者の宿泊日数などから合理的な方法により按分して計算します。
(3)住宅借入金等特別控除
民泊に使用する家屋について、床面積の2分の1以上に相当する部分を専ら自己の居住の用に供しているなどの要件を満たす場合に、住宅借入金等特別控除の適用を受けることができます。
①住宅宿泊事業に利用しない生活用部分
②住宅宿泊事業にのみ利用する業務用部分
③生活用にも業務用にも利用する併用部分のうち、主に生活用として利用する部分
④生活用にも業務用にも利用する併用部分のうち、主に業務用として利用する部分
上記のように区分した上で、総床面積のうち生活用部分(①と③の合計)に占める割合が2分の1を超えるか否かで適用の可否を判断します。また、住宅借入金等特別控除の適用を受ける場合のその控除額は、住宅借入金残高等の金額に、総床面積のうち生活用部分に占める割合を乗じた金額を基礎として計算します。
(4)居住用財産の3,000万円の特別控除の適用関係
居住用財産の3,000万円の特別控除は、以下のいずれかの要件に該当するときに適用を受けることができます。
①現に居住の用に供している家屋を譲渡する場合
②居住の用に供さなくなった家屋を、居住の用に供さなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する場合
消費税の課税関係
(1)宿泊料の消費税の取り扱い
宿泊者から受領する宿泊料は、ホテルや旅館などと同様に消費税の課税対象となります。ただし、当課税期間の基準期間(個人事業者の場合は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が1千万円以下の場合には、当課税期間は原則として消費税の申告・納税義務はありません。
(2)ウェブサイトの掲載料
消費税課税事業者に該当する場合に限りますが、ウェブサイト上に物件を掲載するために、ウェブサイトの運営事業者に掲載料を支払うときは、以下のように取り扱いが異なるためご注意ください。
①国内事業者に支払う場合
仕入税額控除の対象になります。
②国外事業者への支払い、かつ、課税売上割合が95%以上の場合
仕入税額控除の対象になりません。
③国外事業者への支払い、かつ、課税売上割合が95%未満の場合
仕入税額控除の対象になります。同時に、課税対象額にも加算して申告します。(リバースチャージ方式)
担当:高橋 将史